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第五話 「ビジネスモデルとビジネスモデル特許の違いは何か!」
2005年7月19日
出口光
私たちは、経営者のビジネスに関するアイデアや着眼をもとに特許を創るために、500回を超えるブレインストーミングを行ってきました。そこでは、経営者がしばしば、ビジネスモデルとビジネスモデル特許を混同しているために、特許開発のためのブレインストーミングが妨げられることを経験してきました。
ビジネスモデルは、経営者の事業の全体的な仕組みのことであり、それを実施する際には、販売、課金、物流、サービス内容など各方面に渡って、洩れの無いように考え抜かなければならなりません。しかしビジネスモデル特許を開発する場合には、ビジネス全体を特許として取るわけではなく、そのビジネスを実現するために最も重要な、つまり、ビジネスの中核となる部分を「モノやシステム」として、特許にすることが求められます。
経営者は、ビジネスを成功させるために、その事業のあらゆる側面について、実際のビジネス方法の詳細を検討することに時間と労力を費やしてしまい、いたずらに時間が経過してしまいます。そのビジネスを他社に追随されないために、何を特長とするのか、何が核となるのかをピンポイントすることを忘れてしまうことがあるのです。ビジネスの中核は、経営者がユーザに本当に提供したいことであって、そこが他社を追随させないために押さえておくべき、ビジネスモデル特許の特徴となるのです。
例えば、プライスライン・ドット・コムが提供する逆オークション特許を初めて開発する、という場面を想定してみましょう。これまで行われてきたオークションは、売る側の論理に立って、いかに高く売るかを実現するサービスでした。逆オークションでは、視点が買う側にあり、いかに安く買うかが実現できれば、生活者にとって素晴らしいという 着想から、ブレインストーミングされてきたはずです。
ニューヨーク・ロサンゼルス間の航空チケットを200ドル以下で買いたいという情報をインターネットシステムに入力すると、200ドル以下でチケットを売る会社が応募し、一番安い価格で落札できるのです。
このビジネスモデルでは、サービスの方法に特長があるのに、実際のビジネスでは、課金の方法、物流の方法が大切なので、それらの詳細を、ブレインストーミングで詰めることに固執してしまったらどうでしょうか。木を見て森を見ないということわざがありますが、他の森と区別するためには、森の中にある最も重要な木は何かを見極めることが大切なのです。大きなビジネス全体の流れを掴み、その中核は何かを特定し、その中身を集中的に詰めることが大切なのです。
その特長を技術的に詰めた後に、課金の方法や物流の方法を考えれば良いのです。
また、技術に詳しい人にありがちなことですが、複雑でセキュリティの高い暗号化方法にこだわり、ビジネスの中核である生活者の視点に立ったオークションの方法に焦点を絞って議論することができないこともあります。この点は確かに特許性のある部分ではありますが、ビジネス全体から見れば、中核ではありません。ここだけ特許をとっても、ビジネス的には木を見て森をみないことになります。
ビジネスモデルとしてビジネス全体を大極的に掴んだら、その中核を怒涛の如くブレインストーミングし、その中核の技術的ポイントについて、速やかに権利化を進めることが肝要です。その後に、ゆっくりとビジネスの詳細を詰めればよいのです。
さらに、先行者として周辺特許を押さえ、有利な基盤を築き補強していくために、効率的に時間を使わなければなりません。「ビジネスモデル特許」は、他の分野の特許と同様に、ひとつの特許を取得すれば、これでビジネスすべてを押さえることができる万能薬ではないのです。
富士山の頂上を上るためには、複数のルートがあるように、同じビジネスの課題を解決する方法は、複数あるからです。大切なことは、市場性のあるビジネスモデルの中核をまず特許として押さえ、周辺技術を特許で固めて、特許ポートフォリオを創ることが極めて重要な戦略となります。
次回の第六話では、このビジネスモデル特許ポートフォリオとは何かを考えてみましょう。
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